結果として下位会社が社会保険未加入をせざる負えなくなるような、重層下請制度自体が問題でしょう。
実際に現場で作業をしている職人さんは、二次下請以下の下位会社の方が人数が多い。
今後は二次下請までしか使わないと言っても、二次の会社に現在の三次以下の職人さんたちを、全部抱えきれるだけの体力は無い。
重層下請、この悪制を無くさないと、標準見積書も意味を成さない。
私はそう思いますよ。
【日刊 建設工業新聞】[2015年12月3日1面]
『ゼネコン準大手各社/下請社保加入に積極姿勢/法定福利費、8割超が内訳明示で契約』
準大手ゼネコン各社が、下請の専門工事業者の社会保険加入に意欲的に取り組んでいることが日刊建設工業新聞社のアンケートで分かった。
回答した21社のうち18社が、専門工事業者に対し法定福利費を内訳明示した見積もりの提出を求め、明示された金額通りに契約していると答えた。
大半が未加入の1次下請とは契約しない方針も打ち出し、戸田建設では9月までにすべての1次下請が加入。
五洋建設のように未加入の下請と原則契約しない方針を示す企業もあり、2次以下の下請の動向が今後の焦点の一つとなる。
アンケートは準大手24社を対象に実施。
社会保険加入促進に対する方針や現在と今後予定している取り組みなどを聞いた。
21社が回答。うち1社は土木・建築別に答えた。
社会保険の加入促進に向けた各社の方針は、国土交通省の「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」と日本建設業連合会(日建連)が会員企業向けに策定した「社会保険の加入促進に関する実施要領」に基づく取り組みが大半。
日建連の要領では、15年度以降、社会保険未加入の1次下請とは契約を結ばず、16年度以降は2次以下の下請で未加入の業者とは契約しないよう1次下請を指導するとしている。
下請業者が見積もりで法定福利費を内訳明示することは、加入の原資となる社会保険料の必要額を元請に請求し、元請がそれを支払う前提となる。
調査では、21社中18社が法定福利費を内訳明示した見積書を下請に提出させると回答したが、各専門工事業団体が内訳明示のモデルとして作った標準見積書については、「採用する」と答えた企業が5社にとどまった。
多くの企業は自社で作成した見積書式での提出を求めている。
「下請が材工の単価が明確になることを嫌い、従来の見積書式を使いたがる」との指摘もあった。
ただ、「業種別の標準見積書に限定せず採用」(奥村組)、「業種別の標準見積書にかかわらず、法定福利費相当額が明示されていれば、精査・協議した上で契約する」(熊谷組)、「書式を定めることにこだわらず、法定福利費の必要額を記入・提出してもらう」(大豊建設)、「法定福利費の算出根拠を明示できれば書式にはこだわらない」(東急建設)など、柔軟に対応している企業も少なくない。
加入対象の作業員の増減など当初の契約内容に変更が生じた場合の対応は各社さまざまだが、変更・追加となる法定福利費を含め契約し直す企業が目立つ。
「原則、数量増減は当初契約単価に基づく精算を実施。
新規の追加工事は内容に応じ新たに見積もり徴収、単価協議を行う」(飛島建設)、「変更の工事比率に応じて増減する」(フジタ)、「変更見積もりを提出してもらい、追加分に対しても適切な法定福利費を含んだ再契約を締結する」(前田建設)などの回答が寄せられた。
契約後に未加入の作業員がいることが判明した場合の法定福利費の扱いについては、土木・建築別に回答した1社を除き、「検討中」が9社、「求めない」が10社、「求める」が1社だった。
1次下請を中心に構成される各社の協力会組織と連携する動きも広がっている。
戸田建設は、今年6月までに1次協力会社3694社の加入状況調査を完了し、未加入が1%と判明。この1%についても9月末までに加入させたという。
協力会加盟企業の加入率は高く、三井住友建設は「会員以外も含めた現在施工中の協力会社に対し、年1回の加入状況調査を行っている」と答えた。
課題となる2次以下の下請の加入促進に向けた動きも活発化しつつある。
「1次協力会社を通じ加入促進を徹底している」(安藤ハザマ)、「2次以下の加入について、1次下請と定期的に加入促進策を協議している」(西松建設)との回答や、「16年4月以降は公共、民間工事とも未加入の2次以下の下請と契約する1次下請とは特別の事情がない限り契約しない」(五洋建設)と具体的方針を示す企業もあった。
取り組みが先行する大手に続き、準大手でも対策が広がってきたが、「地場ゼネコンにも取り組みを浸透させる必要がある」との意見も寄せられた。
建設業の担い手確保には技能労働者の処遇改善が不可欠。その第一歩となるのが社会保険加入だ。行き過ぎた重層下請構造が加入促進の妨げになっているとの指摘もあり、業界の生産体制の改善も併せて必要になりそうだ。