〈厚生年金の未加入問題〉
厚生年金は会社員や公務員など、約4千万人が加入している公的年金。
厚労省は2015年末、加入できるのにもかかわらず未加入の人が約200万人いると推計し、中小・零細企業を中心に、保険料負担を逃れているとみられる約79万事業所に対して集中調査を始めた。
未加入のままでは低年金や無年金になり、老後は低所得に陥り生活が破たんするリスクが高い。
生活保護の利用者が増えることで、社会的コストも増大する。

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従業員に加入資格があるにもかかわらず、事業所が厚生年金に加入の手続きをしていない「厚生年金の加入逃れ」が、政府の想定以上に広がっているらしい。
厚生労働省は、厚生年金未加入者が約200万人いると推計して、事業所の調査に乗り出したが、調査の対象に含まれない建設作業員や、ごみ収集員の一部も未加入なことが、朝日新聞の調べで判明したそうだ。

法人の事業所は従業員を1人でも雇えば、厚生年金に加入しなければならない。
従業員5人以上の個人事業所も、厚生年金に加入する義務がある。
しかし、建設業者の中には雇っている作業員を「一人親方」として、仕事を外注している実態が判明したとしている。
こうした作業員は多くの場合、保険料が全額自己負担の国民年金に加入している。

一人親方は、2015年度で全国に約60万人おり、厚生年金の加入逃れのために偽装されたと思われるケースも少なくないとみられる。
東京23区の日雇いのごみ収集員(2千~3千人)のほとんども、厚生年金に未加入だ。
同じ業者に1カ月以上続けて雇われれば、厚生年金の加入条件を満たすが、委託業者の一部は違法に加入を避けている。

厚労省年金局事業管理課は、建設作業員やごみ収集員が調査対象から漏れていることを認め、「実態が把握できれば適切に対応したい」とコメントしたと言う。
把握できていない加入逃れは、ほかの業界にも広がりそうだ。

厚生年金は平均的な収入の人(月給45万円くらい)で、毎月約3万9千円(雇い主も同額)の保険料を40年間払うと、月約15万6500円を受け取れる。
一方、国民年金は月約1万6千円の保険料で、受給額は満額でも月約6万5千円。
厚生年金の「加入逃れ」は、将来的に低年金者を増やすことになる。

ネットのニュースに上記のような記事を見つけた。

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私自身、高校から専門学校に進学して、20歳で某重電メーカーに就職してから退職するまでの28年間、何の疑問も持たずに厚生年金を払っていた。

払っていたというより、会社員の場合ほとんどが、所得税や住民税はもとより、社会保険も厚生年金も厚生年金基金も、退職金の積立も・・・ぜ~んぶ差し引かれた残りしか、給与として振込みされないのが普通だ。

私はそれが当然と思って生きてきていたので、縁あって建設関係の会社の経営にたずさわるようになって、厚生年金だけでなく国民年金すら納めていない、ともすれば税金すら納めていない方々が、たくさんいるのを目の当たりにして、愕然とした。

私の父は電気工事士で、京浜急行などの工事を行う会社に勤めていたが、社会保険にも厚生年金にも加入していて、ボーナスや退職金もあったし、所得税も住民税も引かれていたので、まさか建設作業員の多くが厚生年金に加入していないなどとは、思いもしなかった。

確かに記事の通り、厚生年金の「加入逃れ」は、将来的に低年金者を増やすことになるということは、紛れも無い事実だと思う。
でも、雇い主と雇用者合わせて毎月約8万円の厚生年金を40年間払い続けても、月々支払われる年金は15万6千500円と聞くと、少々複雑な気持ちになる。

まず、今の時代は月15万6千500円の年金だけで生活するのは、かなり厳しい。
都会住まいで、持ち家が無ければ、さらに厳しい生活が想像される。

ちゃんと厚生年金を納めていれば、老後は楽とは言わないまでも、中流の生活ができるというなら、多少は無理をしてでも払う価値があると思うが、少ない給料の中から生活をきりつめてまで払う価値が、今の厚生年金には無いかもしれない・・・と思う。

逆に、加入逃れを無くすためには、誰もが加入したくなるような内容の年金制度を作ったほうが、早い気がする。

見積りに法定福利費を載せるなんて対策を取っているみたいだけど、実際に下位会社に法定福利費がちゃんと払われているかどうかは、かなり疑問だ。
特に常用などという形で、安い単価で作業をしている人たちにとって、社会保険や厚生年金に加入しても会社の経営や生活が成り立つだけの実入りがあるだろうか。

法人は1人以上、個人事業は5人以上の従業員がいれば、社会保険や厚生年金に加入させなければならないことはわかっていても、無い袖は振れないというのが実情ではないだろうか。